以前のMCCTを概説した記事では、意味論には簡潔な説明しか与えることができなかった。今回の記事では、MCCTにおいては生きる意味がどのように捉えられているか、より詳しく解説する。

四つの三角形
 ウォン(1997)は生きる意味に関する理論を、互いに重なり合う四つの三角形によって説明している。一つ目の三角形は生きる意味の構成要素に関するもので、生きる意味は認知、感情、動機の三要素から構成されている。二つ目の三角形はロゴセラピーの基本的前提に関するもので、フランクルの理論をそのまま引き継ぎ、意志の自由、意味への意志、人生の意味の三つが挙げられている。三つ目の三角形は意味への意志を構成する要素であり、フランクルによって前提されていた意味の発見に加えて、意味の解釈と意味の創造が加えられている。四つ目の三角形は人生の意味を発見する際の価値を示すものであり、フランクルの理論をそのまま引き継いで、創造、体験、態度が挙げられている。これらの三角形をまとめると、以下のようになる。

       構成要素  基本的前提  意味への意志  人生の意味
頂点(上)  認知    意志の自由  意味の解釈   態度的
頂点(右下) 動機    意味への意志 意味の創造   創造的
頂点(左下) 感情    人生の意味  意味の発見   体験的

四つの三角形の内、三つ目と四つ目の三角形は、二つ目の三角形の二つの要素を説明するものである。また、一つ目の三角形と三つ目の三角形は、フランクルの理論にはない、ウォンのMCCT特有の理論によって構成されている。

認知的要素の重視
 ウォンの意味論における大きな特徴は、特に認知的要素を重視することである。ウォンは、動機や感情に対して認知的要素が優位を持っていることについて、以下のように述べている。「動機的要素は、選択、持続、目的に関連した行動などを意味しているが、それは認知から生ずる。」(wong, 1997)。「自らの人生への満足感や達成感といた情緒的段階は、二つの要素(ー人生の重要さに関する信念と価値ある目標の追求)に由来する。」(wong, 1997)。「構造的な要素としては、活動の追求と生活の目標へ影響を与えるところの、個人的に構成され、文化に根付いた認知システムとして、個人的意味を定義することができる。肯定的な信念と目的のある生活は、人生に重要さと達成感の感覚を必ず与えることになる。」(wong, 1997)。これらの文言から、認知、動機、感情の順に優位関係が想定されていることが分かる。また他の論文では、こうした認知的要素の優位から、それが三角形における上部の点に位置づけられていることが述べられている。「こうした理由から、図1は他の二つの要素を基礎付けるものとして認知を示しているのである。」(wong, 1998)

意味への意志の三形態
 ウォンによると、意味への意志においては、意味の発見の他に、意味の解釈と意味の創造が求められている。また、それぞれの意味への志向においては、求めらている意味の種類も、それを満たすための手段も異なってくる。意味の発見における対象は究極的意味(ultimate meanings)であり、反省や瞑想、スピリチュアルな信念によって満たされる。意味の解釈における対象は個別的意味(specific meanings)であり、原因帰属や認知的スキーマによって満たされる。意味の創造における対象は人格的意味(persona meanings)であり、コミットメントや活動、肯定的随伴性の確認などによって満たされる。後の論文(wong, 1998)では、人格的意味は個別的意味に含まれる形になり、究極的意味と個別的意味の両方が必要であるとされている。


文献
Wong, P. T. P. (1997). Meaning-centered counseling: A cognitive-behavioral approach to logotherapy. The International Forum for Logotherapy, 20(2), 85-94.
Wong, P. T. P. (1998). Meaning-centred counselling. In P. T. P. Wong, & P. Fry (Eds.), The human quest for meaning: A handbook of psychological research and clinical applications (pp. 395-435). Mahwah, NJ: Erlbaum.