今回の記事では、ディルタイの基本的情報について整理していく。

ディルタイ(1833~1911)
1883『精神科学序説』
1894『記述的分析的心理学の構想』
1900『解釈学の成立』
1906『体験と詩』
1910『精神科学における歴史的世界の構成』

 ディルタイは主に19世紀から20世紀初めにかけて活動した、哲学史的には生の哲学と呼ばれるグループの代表的な哲学者の一人である。ディルタイの主な関心は、精神科学の基礎付けにあった。精神科学というと心理学のような学問が想像されるかもしれないが、ここでいう精神科学は科学一般の下位カテゴリーとして自然科学と対になるような学問であって、心理学だけでなく文学や社会学といった学問も含んだ、現代でいう人文科学に相当する学問である。
 ディルタイはその精神科学の基礎付けにあたって、抽象的な概念や理論ではなく、生に直接与えられる体験から出発するという方法を重視し、体験や解釈について、重要な考察を残した。その思想的遺産は、人間理解の方法として、また、心理学という学問の学的基礎付けとして、現代の臨床心理学にも重要なものとなっている。