現存在分析というと、日本ではビンスワンガーとボスの名が知られているが、それ以外の現存在分析家については、まだほとんど知られていない。そこで今回の記事では、ボス以後の現存在分析家にどのような人がいるのか、紹介していく。
ジオン・コンドラウ Gion Condrau(1919-2006)
コンドラウはスイスの現存在分析家である。彼はボス亡き後、現存在分析学派の指導的立場にあり、国際現存在分析連盟の発足や研究雑誌の創刊など、制度面でも大きな貢献をした。代表的著作に『心理療法へのマルティン・ハイデガーの影響』(2022)(1)などがある。
ポール・J・スターン Paul J. Stern(1921-1982)
スターンは主にアメリカで活動した現存在分析家であり、ボスに師事し、ジェームズ・ブーゲンタールやゴードン・オールポートと共に働いていた。代表的著作に『病的人間とその世界』(1964)、『狂気の賞賛:現実感療法ー取り戻される自己』(1972)(2)などがある。
アリス・ホルツハイ・クンツ Alice Holzhey-Kunz(1943-)
クンツはスイスの現存在分析家である。彼女は前期ハイデガーの『存在と時間』を重視する解釈学的現存在分析という新しいアプローチを提案し、後期ハイデガー哲学を重視するボスの理論に基づいた既存の学会から脱退して、新たな分派を形成した。現在スイスにある現存在分析の唯一の教育訓練期間はこの解釈学的現存在分析の理論に基づいている。代表的著作には、『現存在分析:心理的苦悩への実存的観点とその心理療法』(2014)(3)がある。
ペリクレス・カストリニディス Perikles Kastrinidis(1946-)
カストリニディスは、ウィーンに生まれ、スイスで活動した現存在分析家である。クンツと共に分派を形成し、教育訓練プログラムを指導した。短期力動精神療法の創始者の一人であるディバンルー(Dvanloo)と出会い、大きな影響を受ける。彼の現存在分析については、英訳されている著作はないが、数編の論文が英語で投稿されている。
エリック・クレイグ Erik Craig(1944-)
クレイグはアメリカの現存在分析家である。メダルト・ボスやポール・J・スターンに師事し、実存的心理療法の実践、教育活動を40年以上続けている。彼は現存在分析の研究において、精神分析との対話を続けていくことを重要視しており、無意識や夢、抵抗といった精神分析的概念を現象学的、実存論的に解釈した一連の論文を著している。編著として『自由のための心理療法:心理学と精神分析における現存在分析的方法』(1988)(4)がある。
(1)Condrau, G. (2022). MARTIN HEIDEGGER'S IMPACT ON PSYCHOTHERAPY . FREE ASSOCIATION BOOKS.
(2) Paul J Stern.(1971)In praise of madness;: Realness therapy--the self reclaimed,Norton
(3)Holzhey-Kunz, A. (2014). Daseinsanalysis. Free Association Books.
(4)Craig, E. (1988). Psychotherapy for freedom: The Daseinsanalytic way in psychology and psychoanalysis. Division of Humanistic Psychology, American Psychological Association.
参考文献
van Deurzen, E., Craig, E., Längle, A., Schneider, K. J., Tantam, D., & du Plock, S. (2019). The Wiley World Handbook of Existential Therapy.
ジオン・コンドラウ Gion Condrau(1919-2006)
コンドラウはスイスの現存在分析家である。彼はボス亡き後、現存在分析学派の指導的立場にあり、国際現存在分析連盟の発足や研究雑誌の創刊など、制度面でも大きな貢献をした。代表的著作に『心理療法へのマルティン・ハイデガーの影響』(2022)(1)などがある。
ポール・J・スターン Paul J. Stern(1921-1982)
スターンは主にアメリカで活動した現存在分析家であり、ボスに師事し、ジェームズ・ブーゲンタールやゴードン・オールポートと共に働いていた。代表的著作に『病的人間とその世界』(1964)、『狂気の賞賛:現実感療法ー取り戻される自己』(1972)(2)などがある。
アリス・ホルツハイ・クンツ Alice Holzhey-Kunz(1943-)
クンツはスイスの現存在分析家である。彼女は前期ハイデガーの『存在と時間』を重視する解釈学的現存在分析という新しいアプローチを提案し、後期ハイデガー哲学を重視するボスの理論に基づいた既存の学会から脱退して、新たな分派を形成した。現在スイスにある現存在分析の唯一の教育訓練期間はこの解釈学的現存在分析の理論に基づいている。代表的著作には、『現存在分析:心理的苦悩への実存的観点とその心理療法』(2014)(3)がある。
ペリクレス・カストリニディス Perikles Kastrinidis(1946-)
カストリニディスは、ウィーンに生まれ、スイスで活動した現存在分析家である。クンツと共に分派を形成し、教育訓練プログラムを指導した。短期力動精神療法の創始者の一人であるディバンルー(Dvanloo)と出会い、大きな影響を受ける。彼の現存在分析については、英訳されている著作はないが、数編の論文が英語で投稿されている。
エリック・クレイグ Erik Craig(1944-)
クレイグはアメリカの現存在分析家である。メダルト・ボスやポール・J・スターンに師事し、実存的心理療法の実践、教育活動を40年以上続けている。彼は現存在分析の研究において、精神分析との対話を続けていくことを重要視しており、無意識や夢、抵抗といった精神分析的概念を現象学的、実存論的に解釈した一連の論文を著している。編著として『自由のための心理療法:心理学と精神分析における現存在分析的方法』(1988)(4)がある。
(1)Condrau, G. (2022). MARTIN HEIDEGGER'S IMPACT ON PSYCHOTHERAPY . FREE ASSOCIATION BOOKS.
(2) Paul J Stern.(1971)In praise of madness;: Realness therapy--the self reclaimed,Norton
(3)Holzhey-Kunz, A. (2014). Daseinsanalysis. Free Association Books.
(4)Craig, E. (1988). Psychotherapy for freedom: The Daseinsanalytic way in psychology and psychoanalysis. Division of Humanistic Psychology, American Psychological Association.
参考文献
van Deurzen, E., Craig, E., Längle, A., Schneider, K. J., Tantam, D., & du Plock, S. (2019). The Wiley World Handbook of Existential Therapy.
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