今回は、うつ病に対して効果があると分かっている心理療法について書きます。

認知再構成法
認知再構成法は、ものの見方(認知)を変えることによって、うつの改善を目指す心理療法です。1998年の時点で48の効果研究論文が出ており、うつ病に対して抗うつ薬と同等の大きな効果があることが分かっています。(1)うつ病に対する効果的な心理療法の中では最も歴史が長く、認知行動療法における代表的な技法となっています。

行動活性化療法
行動活性化療法は、相談者さんの気分を改善する活動を分析し、増やしていく心理療法です。2007年までに16の効果研究論文が出ており、認知再構成法と同等の大きな効果があることが分かっています。(2)行動活性化療法は第三世代の認知行動療法として、比較的新しい心理療法なのですが、近年ではうつ病に対する行動療法の代表的アプローチとして、一般的な認知行動療法の枠組みで行われることが多くなっています。

対人関係療法
対人関係療法は、相談者さんの人間関係を調節し、よりよい対人関係スキルを習得することによって、うつの軽減を目指す心理療法です。2011年までに、38の効果研究論文が出ており、うつ病に対して効果があると分かっています。(3)海外ではうつ病治療において、認知行動療法と常に並べられるほど、有名で効果的なアプローチなのですが、日本の心理学においては未だほとんど普及していません。

問題解決療法
問題解決療法は、相談者さんが直面している具体的な問題に焦点を当て、問題の定義や目標の設定、解決策の産出と決定、といった構造可された方法を用いて解決を目指す心理療法です。2008年までに21の効果研究論文が出ており、うつ病に対して明確な効果があると分かっています。(4)問題解決療法も純粋な形では日本でまだほとんど普及しておらず、問題解決技法という認知行動療法の一部として、簡易版が広まっているという状況です。

マインドフルネス認知療法
マインドフルネス認知療法は、うつ病の再発予防を目的として、瞑想を取り入れて発展した心理療法です。2011年までに9の効果研究論文が出ており、うつ病の再発率軽減において効果があることが分かっています。(5)マインドフルネス認知療法は第三世代の認知行動療法として比較的新しい心理療法で、元々グループで行うものであったため、日本ではまだ受けられるところが少ないという印象です。

効果が微妙な心理療法
精神分析、来談者中心療法などは、いずれも学術的な心理学の中で歴史のある心理療法ですが、うつ病に対する現代の効果研究では、適切な論文の数が少ない、あるいは効果が上に挙げた心理療法には及ばないと見る研究者が多くなっています。(6)

効果のない心理療法
NLP(神経言語プログラミング)、レイキ(霊気)療法、インナーチャイルドセラピーなど、これらは非科学的な、効果の実証されていない心理療法です。たまに臨床心理士、公認心理師資格を所有している方でもこうした心理療法を用いると自称しているのを見ることがあり、唖然とさせられるのですが、このような非科学的な心理療法を受けるのは時間と金銭の無駄、また危険な行為でもあるので、やめましょう。


(1)Gloaguen, V., Cottraux, J., Cucherat, M., & Blackburn, I. M. (1998). A meta-analysis of the effects of cognitive therapy in depressed patients. Journal of affective disorders, 49(1), 59-72.
(2)Cuijpers, P., Van Straten, A., & Warmerdam, L. (2007). Behavioral activation treatments of depression: A meta-analysis. Clinical psychology review, 27(3), 318-326.
(3)Cuijpers, P., Geraedts, A. S., van Oppen, P., Andersson, G., Markowitz, J. C., & van Straten, A. (2011). Interpersonal psychotherapy for depression: a meta-analysis. American Journal of Psychiatry, 168(6), 581-592.
(4)Bell, A. C., & D'Zurilla, T. J. (2009). Problem-solving therapy for depression: a meta-analysis. Clinical psychology review, 29(4), 348-353.
(5)Piet, J., & Hougaard, E. (2011). The effect of mindfulness-based cognitive therapy for prevention of relapse in recurrent major depressive disorder: a systematic review and meta-analysis. Clinical psychology review, 31(6), 1032-1040.
(6)Barth, J., Munder, T., Gerger, H., Nüesch, E., Trelle, S., Znoj, H., ... & Cuijpers, P. (2016). Comparative efficacy of seven psychotherapeutic interventions for patients with depression: a network meta-analysis. Focus, 14(2), 229-243.